1-3 つらい気持ちが続くときには

がんと告げられた後に続くショックや動揺は、多くの場合、時間がたつにつれて、少しずつ和らいできます。

しかし、ひどく落ち込んで何も手に付かない状態が長引いたり、日常生活に支障が続くようであれば、思い切って心のケアの専門家に相談してみましょう。心のケアは、心療内科医しんりょうないかい精神科医せいしんかい心理士しんりし※などが専門家として当たります。

※心理士がんになったことによる不安、落ち込みに対して、心理学の手法を生かして相談に乗り、支援します

下の図は、心のケアの専門家に相談するべきかどうかを判断する自己診断法です。〔1〕の「つらさ」の寒暖計が4点以上、かつ、〔2〕の「支障」の寒暖計が3点以上の場合、適応障害てきおうしょうがい※※などの中程度以上のストレス状態である可能性が高いと考えられます。つらさの内容について、まずは担当医や看護師などに相談してみてください。

※※ 適応障害がんである現実を前に動揺が長引き、精神的苦痛が非常に強いために日常生活に支障を来している状態です。

【3ページ図 つらさと支障の寒暖計】

(国立がん研究センター精神腫瘍学グループ「つらさと支障の寒暖計」より)

図1

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患者さんの手記 〔2〕
自分をいたわる
私の場合、診断されてからもしばらくは不安や恐怖で混乱し、なかなか病気に向き合う気持ちになれませんでした。日にちがたつにつれて、家族や友人には、少しずつつらい気持ちや弱音を話すことができました。入院してからは、私と同じように病気と向き合っている多くの仲間がいることを知りました。治療をしてくれる医療スタッフや私を支えてくれる家族への感謝の気持ち、「つらいのは自分だけじゃない」といった思いが、少しずつ病気を受け入れることを後押ししてくれたように思います。また、治療の合間に行った温泉で出会った人たちとの語らい、療養生活の中で始めた語学の勉強。病気は確かにつらい経験だけれど、そのことで、これまでとは違った人生の楽しみにも出会えました。「病気なのだし、少しゆっくりして自分をいたわってあげてもいいのではないか」今はそんなふうに思っています。

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