治療法は、腫瘍の性質や体の状態などから検討します。患者やご家族の希望なども含めて検討し、担当医と共に決めていきます。
図2は、腎芽腫の治療について、一般的な流れを示したものです。担当医と治療方針について話し合うときの参考にしてください。
【8ページ図 図2.小児の腎芽腫の臨床診断と治療 】
【説明】
【図おわり】
小児腎芽腫に対する初期治療法は、@全摘術を行った後、その手術および病理検査の結果を基に術後の化学療法や放射線治療を行う米国COG(Children's Oncology Group)方式と、A化学療法を先行して腫瘍の縮小を図った後、全摘術を行うSIOP(Societe Internationale d'Oncologie Pediatrique ;International Society of Paediatric Oncology)方式の2つに大別されます。いずれの治療法でも、同程度の治療成績が得られており、腎芽腫の予後の良好な場合では、90%近くの高い生存率となっています。
日本では米国COG方式に従って治療する施設が多かった経緯があります。米国COG方式では、まず腫瘍を摘出するため、正確な病理診断と病期診断に基づく適切な術後化学療法を選択することができるなどの利点があります。
一方、SIOP方式では、腫瘍が大きい場合には化学療法により腫瘍を縮小させ、手術時の破裂などの合併症を回避することができます。手術時のリスク回避により過剰な化学療法や放射線も回避できるため、晩期合併症リスクも軽減されます。また、化学療法の後に腫瘍を摘出するため、化学療法の効果を判定できるという利点があります。
治療反応性の良い予後良好の組織型(低リスク)では、副作用のリスクも考慮して強度の低い治療を選択しますが、治療反応性の悪い予後不良の組織型(高リスク)では、薬の量や種類を増やしたり、放射線治療を追加したりするなど、副作用のリスクは高まりますが強度の高い治療に切り替えます。
両側性腫瘍があるV期では、できるだけ正常な腎臓を残して腫瘍だけを摘出するため、手術前に化学療法を行って腫瘍の縮小を図ります。原則として、それぞれの腎芽腫に対して組織型と腫瘍の広がりを検討し、より進行している側に適合する治療を行います。