4-4-1 手術によりがんを取りきることが難しい進行・再発胃がんに対する化学療法

遠隔転移がある場合など、手術でがんを切除することが難しい場合や、がんが再発した場合に行われます。薬物療法だけでがんを完全に治すことは難しいですが、がんの進行を抑えたり、がんによる症状を和らげたりすることが分かっています。

治療には、一次化学療法から四次化学療法以降までの段階があります。まずは一次化学療法から始め、治療の効果が低下した場合や、副作用が強く治療を続けることが難しい場合には二次化学療法、三次化学療法、四次化学療法以降と治療を続けていきます(図7)。

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【21ページ図 図7 手術によりがんを取りきることが難しい進行・再発胃がんに対する標準的な化学療法】

日本胃癌学会編 胃癌治療ガイドライン医師用 2021年7月改訂【第6版】 2021年 金原出版 P2 および学会速報より作成

図7 手術によりがんを取りきることが難しいがんに対する標準的な化学療法

【図終わり】

どの種類の薬を使うかは、がんの状況や臓器の機能、薬物療法に伴って起こることが想定される副作用、点滴や入院の必要性や通院頻度などについて、本人と担当医が話し合って決めていきます。薬に関する詳しい情報は、治療の担当医や薬剤師などの医療者に尋ねてみましょう。

(1) 一次化学療法

一次化学療法では、細胞障害性抗がん薬を用います。なお、胃がんでは、HER2ハーツーと呼ばれるタンパク質ががん細胞の増殖に関わっている場合があるため、治療前に病理検査を行い、HER2陽性の場合には、HER2タンパク質の働きを抑える分子標的薬を併用することが推奨されています。また、HER2陰性の場合には、免疫チェックポイント阻害薬を併用する場合もあります。

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(2) 二次化学療法

二次化学療法では、一次化学療法で使用しなかった細胞障害性抗がん薬と分子標的薬を組み合わせて用います。二次化学療法の前には、MSI検査と呼ばれるがんの遺伝子検査を行うことが推奨されています。MSI検査で、MSI-High(遺伝子に入った傷を修復する機能が働きにくい状態)の場合には、免疫チェックポイント阻害薬を用いることもあります。

(3) 三次化学療法

三次化学療法では、HER2陰性の場合には、二次化学療法までに使用しなかった細胞障害性抗がん薬、もしくは免疫チェックポイント阻害薬のいずれか、HER2陽性の場合は、一次化学療法、二次化学療法とは異なる種類の分子標的薬を用いることがあります。なお、二次化学療法までに免疫チェックポイント阻害薬を使用した場合は、三次治療で用いることは推奨されていません。

(4) 四次化学療法以降

四次化学療法以降は、三次化学療法までで候補になった薬のうち、使用しなかった薬剤に切り替えて治療することを検討します。