3の3の2.IMRT(強度変調放射線治療)

転移性脳腫瘍は腫瘍と正常細胞との境界が比較的明瞭ですが、神経膠腫は浸潤性に発育し腫瘍の広がりも大きいため、ピンポイントに高エネルギーの放射線を照射する、ガンマナイフやリニアックを用いた定位放射線治療では腫瘍をコントロールすることは困難です。正常脳への照射を防ぐために、強度変調放射線治療(IMRT)と呼ばれる治療を行うことがあります。IMRT とは、コンピューターによる緻密な計算により、腫瘍の形状に合わせて放射線を照射することで、がん組織には高い放射線量を与え、隣接する正常組織には線量を低く抑えることを可能にした治療方法です。

なお、陽子線治療や重粒子線治療(注)は頭頚部がん(耳鼻科領域のがん)に対してはよく行われますが、神経膠腫に対しては、これらの治療が通常の放射線治療よりも効果があるかどうかは不明です。

(注)陽子線治療・重粒子線治療:陽子や重粒子(重イオン)などの粒子放射線のビームを病巣に照射する放射線治療の1つです。神経膠腫に対しては、先進医療として行われています。注終わり
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グレード2のびまん性星細胞腫、乏突起膠腫などに対する放射線治療は、海外での臨床試験の結果、手術診断後に早期放射線治療を行う場合と、再発あるいは腫瘍増大後に放射線治療を行う場合とで、生存期間が変わらないという結果が報告されました。全摘出されている場合は、手術のみで経過をみることも多いですが、神経膠腫の患者さんは、再発後に症状が悪化することもしばしばあるため、腫瘍が残っている場合にはグレード2の神経膠腫に対しても、早期に放射線治療が行われていることが多いです。

●副作用について

放射線治療後すぐにあらわれる副作用としては、放射線が照射された部位に起こる皮膚炎、中耳炎、外耳炎などや、照射部位とは関係なく起こるだるさ、吐き気、嘔吐、食欲低下などがあります。これらの症状は照射後約1ヵ月で消失します。また、脳そのものの機能に影響が及ぶこともあります。中には、放射線治療が終了して数ヵ月から数年たってから起こる症状(晩期合併症)もあります。このような影響は高齢者に少し多くなる傾向がありますが、全般に、患者さんによって副作用の程度は異なります。
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