グレードとは、治療をしなかった場合の、腫瘍の増大や進行、予後の目安となる指標です。生検や手術によって取り出した腫瘍組織について病理診断を行うことで、脳腫瘍の種類とグレードが診断されます。
グレード1の腫瘍は、悪性度が比較的低く、手術で取り除くことができると、再発の危険性は少なくなります。一方、グレード2〜4では、グレードが上がるにつれて、腫瘍の増殖速度が速くなり、悪性度は高まります。グレードが低くても、手術によって腫瘍を取り除くことが難しい部位などでは治療が難しい場合があります。反対にグレードが高くても薬物療法や放射線治療が効きやすく治療を進めやすい場合もあります。そのため、グレードの高さと治療の難しさは、必ずしも一致するとは限りません。
また、これまで脳腫瘍の種類は、主に、病理診断(顕微鏡で腫瘍細胞の形や集まり具合を観察する方法)の結果に基づいて分類されていましたが、最新の世界保健機関(WHO)2021年分類では分子生物学的な分類が必須となっています。この分類方法に従えば、脳腫瘍の種類を特定するためには、分子生物学的検査(脳腫瘍組織からDNAを抽出し、DNAの変化の様子を調べること)を行い、その結果と病理診断結果を統合して判断し、最終診断とすることになりました。
小児の患者の数が多い脳腫瘍について、種類とグレードを示します(表4)。
【14ページ表 表4.主な脳腫瘍の種類とグレード】
【表終わり】
David N. Louis, et al.
The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System:a summary. Neuro-Oncology,2021; 23(8):1231-1251.
WHO Classification of Tumours Editorial Board editor. Central Nervous System Tumours WHO Classification of Tumours,5th ed. 2022,World Health Organization.
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