がんという病気では、診断や治療、その後の療養など、医療者と長く関わっていくことになります。ご本人の病状を最もよく理解しているのは、担当医をはじめとする医療者です。
納得して治療や療養に向き合えるように、医療者にしっかりと希望や疑問を伝え、信頼関係をつくっていくことは大切な点です。特に、痛みなどの自覚症状や困っていることは、ご本人にしかわからないため、ご本人が自分の言葉で伝えることが必要です。
しかし、混乱して頭がいっぱいになり、担当医に何をどう質問してよいかわからない、思うように希望を伝えられないという方もいます。そうした中で、家族が冷静に立ち会ってくれることで助かるという方もいます。
一方で、家族がご本人以上につい感情的になってしまったり、治療方針等に関してご本人の意向を確認せずにご家族自身の思いを先行させてしまうことなどで、互いに衝突したり、ご本人が困ってしまった例も少なくありません。
治療や療養生活で、「いつ」「誰に」「どんなふうに」サポートをしてほしいかは、人によって異なりますが、あくまでも治療の主役はご本人であることに変わりありません。ご本人が納得できる選択ができるように、話し合いをしていきましょう。
以下は、担当医との話し合いに際して、ご本人とご家族から寄せられた声の例です。参考にしてみてください。
【図3 担当医との話し合いにおけるご本人とご家族の声】
患者として悩んだこと
・ 家族の心配はありがたかったが、がんについてすぐに向き合う気持ちになれない状態だった。
・ 心配のあまり、家族がとても感情的になってしまった。
・ 家族と治療の希望が異なったときに、家族の希望を強く主張された。
・ 担当医との面談で、家族が要領を得ない質問を繰り返した。
家族として工夫したこと
・ まず本人の意見を尊重するよう心がけた。
・ 診断や治療の説明を受けるときはできるだけ同席した。
・ 担当医との面談前によく話し合い、どうしたいかを一緒に考えた。
・ 担当医との面談では、メモをとったり、本人が言いにくいことがあるときには代わって意見を付け加えるなどした。
・ 本人が治療についてゆっくり考えられる時間をつくった。
・ 治療への思いに相いれない部分もあったが、互いに納得できるまで何度も素直な思いを話し合った。
・ ほかの家族とも情報共有を心がけた。
【図終わり】